XI JUMBO チェイン速度とリンク数の関係の定量化の試み
XI シリーズにおいては、チェインによりつながっているダイス全体が若干浮き上がる仕様があります。
この仕様により、チェイン速度の上昇がリンク数に大きく影響します。
そこで、この「チェイン速度」と「リンク数」の関係性について考えたいと思います(主にタイムリミテッドを想定)。
XI JUMBO の各種定数を用いますが、予約チェイン関係を除けば初代 XI にも適用できる議論のはずです。
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前提条件
チェイン速度とリンク数の関係性を考えるため、チェイン中のダイス(沈んでいる最中のダイス)の体積に着目していきます。
ダイスが沈み切るまでの時間: 8秒
チェインによるダイス上昇相当時間: 0.9秒
安定してチェインを続けている状況として、次が成り立つとします。
1回のチェインに要する平均時間が$ x秒
平均的なリンク数が$ l個
問題を簡単にするため、
常に$ x秒間隔でチェインを行う
チェインにより既存のダイスを踏みつぶさない
とします(踏みつぶしてチェインする場合は後述します)。
体積変化の比較
さて、リンク数の上下を考えるため次の2つの量を考えます。
(A) 1度のチェインで増加する体積の合計(時間換算)
(B) チェインしてから次のチェインが起こるまでに減少する体積の合計(時間換算)
それぞれを計算すると次のようになります。
(A) について
ダイスが一つ新規で消えるのに加え、$ l個のダイスがチェインによって浮き上がるため、合計$ 8 + 0.9 l秒相当
(B) について
合計$ l個のダイスが$ x秒かけて沈む量なので、合計$ lx秒相当
※ (A) でダイスが増えるためリンク数は$ l + 1に増えるとも考えられますが、実際は沈む過程のどこかでリンク数が減らないとリンク数だけ無限に増えてしまうため、もともと$ lであったと考えて計算しています
チェインの定常状態(体積変化がない)においては、上記の (A), (B) は等しくなると考えられます。
すなわち、$ 8 + 0.9 l = lxを解いて
$ l = 8 /(x - 0.9)
がチェイン間隔$ xとリンク数$ lの関係となります(下表)。
table:addition_link
チェイン間隔(秒) リンク数
1.8 8.9
1.6 11.4
1.4 16.0
1.3 20.0
1.2 26.7
1.1 (40.0)
(参考)タイムリミテッドのスコア
上の関係式から、チェイン速度からタイムリミテッドのスコアを見積もることも可能です(下表)。
table:addition_score
チェイン間隔(秒) チェイン数 スコア(万点)
1.8 100 26.7
1.6 113 43.4
1.4 129 79.3
1.3 139 115
1.2 150 180
1.1 164 (321)
計算の条件は以下の通りです。
全て6の目でチェインを行ったと仮定
切り捨ての問題を避け、すべて実数で計算する(最終結果は四捨五入)
チェイン間隔を$ xとして、スコアを次のように計算
リンク数$ lは上記関係式に従って決める
合計チェイン数を$ c = 180/xとする
最終的なスコアは$ \textstyle \sum_{k = 1}^{c} 6kl \simeq 3l c^2で計算
上式の適用限界について
上記の関係式は既存のダイスを踏みつぶさないとして計算した値です。
実際にはダイスの踏みつぶしがおこるため、リンク数とスコアは上記より少なくなる傾向にあります。
また、チェイン間隔 1.1 秒の場合、リンク数が 40 となっていますが、これは仕様上ほぼ不可能な値と言えるでしょう。
このことは、チェイン間隔を 1.1 秒以下にしたい場合、
予約チェイン
既存ダイスを踏みつぶしながらのチェイン
のいずれかでリンク数を意図的に抑える必要があるということを示唆します。
また (A) を計算する際に、 「ダイスの高さは元の高さよりは増えない」という制限は無視しています。
実際にはチェイン間隔が短いと、ダイスの高さが元の高さまで戻ることがあり、この場合上記の計算は成立しません。
ただし、ダイスの高さが元の高さまで戻るためにはチェイン間隔 0.9 秒を下回る間隔でのチェインが必要であり、頻繁に起こることではないため、それほど考慮しなくても良いと考えています。
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予約チェインの場合
上記の議論を仮想的に予約チェインに適用すると次のようになります。
予約チェイン時の体積変化について考えると
(A) について
予約チェインの発生タイミングをダイスがちょうど半分沈んだ時と考えると、予約チェインが生じるマスの体積は$ 4秒分回復することになるため、合計$ 4 + 0.9 l秒相当
(B) について
通常チェインと同様に$ lx秒相当
よって、同様にリンク数は
$ l = 4 /(x - 0.9)
となり、通常チェインの半分になることがわかります。
当然、予約チェインだけではリンク数は増えないため、厳密には上記の数値は意味を持たないのですが、通常チェインと並行して予約チェインを行う場合は上の数字が参考になります。
例えば、予約チェインの割合が$ r、通常チェインの割合が$ 1 - rでチェインを行う場合、
おおよそ平均浮き上がり量 (A) を$ r(4 + 0.9 l) + (1 - r) (8 + 0.9 l) = 8 - 4r + 0.9 lと見積もることができます
(複数チェインをまとめることにどれだけ妥当性があるかわからないため、あくまで理論上です)。
この場合、リンク数は
$ l = (8 - 4r) /(x - 0.9)
となるため、結果的に予約を頻繁に行うほど最終的なリンク数が減少することになります
(チェイン速度は同じと仮定している点に注意してください)。
踏みつぶしチェインの場合
同様に、踏みつぶしチェイン時の体積変化について考えると
(A) について
踏みつぶしによって回復した体積(秒数換算)を$ v($ 4 < v < 8)とすると、合計$ v + 0.9 l秒相当
(B) について
通常チェインと同様に$ lx秒相当
上記の$ vは踏みつぶすダイスの高さによって異なりますが、値の範囲から
「踏みつぶしチェイン」は「通常チェイン」と「予約チェイン」の中間的な性質を持つ
「踏みつぶしチェイン」は「予約チェイン」ほどではないが、リンク数を多少下げる効果がある
と言えるでしょう。
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一般化
「通常チェイン」と「予約チェイン」、そして「踏みつぶしチェイン」は結局 (A) の体積増加量のみが異なります。
そこで、 (A) について踏みつぶし係数$ \alphaを定義し、
回復した体積(秒数換算)を$ 8(1 - \alpha)とする
と統一的に考えてみることにします。通常チェインの場合の体積増加量が$ 8であることから、$ \alphaはチェイン時に失われた体積がダイスいくつ分であるかに相当します。
各チェイン方法における踏みつぶし係数は
通常チェインの場合$ \alpha = 0
予約チェインの場合$ \alpha = 0.5
踏みつぶしチェインの場合$ 0 < \alpha < 0.5(踏みつぶしたダイスが1個の場合)
です。今までの議論と同様にリンク数を求めると
$ l = 8 (1 - \alpha) / (x - 0.9)
となります。
チェイン速度と効率的な踏みつぶし量
チェイン速度が上昇すると平均リンク数は増加しますが、
あまりリンク数が大きすぎると、自由に動かせるダイスが減り、逆にその後のチェイン速度が減少することになります。
そこで、大きすぎず小さすぎないような最適なリンク数がどこかに存在することになります。
もちろん、最適なリンク数は予約効率などにもよるため一意に決められるものではありませんが、リンク数の上限 (49) に近づくにつれて急速にチェインが困難になることから、多くの場合チェイン維持が限界になる直前の 33~37 辺りに存在すると考えられます。
そこで、とりあえず最適なリンク数が $ l_\mathrm{opt} = 35であると仮定して、リンク数が$ l_\mathrm{opt}に最も近くなるような踏みつぶし係数$ \alphaを求めてみます。前節の式$ l = 8 (1 - \alpha) / (x - 0.9)を利用し、これが最も$ l_\mathrm{opt}に近くなる踏みつぶし係数を計算した結果を示します(下表)。
table:opt_num_link
チェイン間隔(秒) 最適な踏みつぶし係数
1.2 0
1.15 0
1.1 0.125
1.05 0.343
1.0 0.563
当然ではありますが、リンク数 35 を目標として計算しているため、そもそも通常チェインでリンク数 35 が達成できない速度では、踏みつぶさずチェインするのが最適ということになります(これは半分正しい結論であるとは思いますが、今回の議論はチェイン速度一定という起こりえない前提をおいているため導かれる結論でもあります。実際のプレイでは配置により効率良くチェインできる方法は変わるため、踏みつぶしたほうがいいことも多々あります)。
逆にリンク数 35 を達成可能な速度(1.13 秒程度)からは、急激に踏みつぶしの需要が増加します。特にチェイン間隔 1.0 秒まで行くと$ \alpha = 0.563となり、全チェインを予約にしても達成できない値となります(そのため実質的なチェイン間隔 1 秒以下にすることはほぼ不可能と考えてよいのだと思います……)
結局のところ、
ある程度リンクを増やせるようになるまではチェイン速度向上が重要
フィールドが埋め尽くされるほどリンク数を増やせるようになったら、踏みつぶし(予約)の頻度が重要になる
といったある程度当然の結論になるかとは思います。
(参考)タイムリミテッドのスコア
上記の「最適な踏みつぶし係数$ \alpha」を考慮に入れた形で、再度タイムリミテッドのスコアの見積もりを示します(下表)。
チェイン間隔 1.2 以上については前述の表と同じになります。
table:general_score
チェイン間隔(秒) 踏みつぶし係数 チェイン数 スコア(万点) 予約時スコア(万点)
1.2 0 150 180 180
1.15 0 157 235 235
1.1 0.125 164 281 351
1.05 0.343 171 309 520
1.0 0.563 180 340 -
前述の表と異なる点は次の通りです。
リンク数$ lは「最適な踏みつぶし係数」から決定(つまり、一定のチェイン速度を超えると$ l_\mathrm{opt}になるとして計算)
「予約時スコア」は踏みつぶしが全て予約チェインであると仮定して計算した値。つまり平均して踏みつぶし係数が$ \alphaになるように、予約チェインの割合が$ 2 \alphaであるとして計算したスコア$ 3l c^2 \cdot (1 + 2 \alpha)
一応予約チェインを考慮して「予約時スコア」の欄を作ってみましたが、大分無理のある数字のように思います……
実際のプレイと比較してみたりすれば面白いのかもしれません。